前回からのつづきです。
前置きが長くなりましたが
やっと英彦山でのミシャグジについて書く流れになってきました。
まず英彦山についてすこし説明します。
情報の出典元はウィキペデイアです。
英彦山と書いて、ひこさんと読みます。
福岡県と大分県との境にある1,199mの山塊。
羽黒山(山形県)・熊野大峰山(奈良県)とともに
「日本三大修験山」に数えられ山中のいたるところに山伏の坊舎跡が残っています。
山伏の修験道場として古くからたくさんの修験者がこの山で武芸の鍛錬に力を入れていました。
最盛期には数千名の僧兵を擁し、大名に匹敵する兵力を保持していたとも。
当然、修験山なので、昔は女人禁制の山域でした。
現在は女性でも登れます。
ここでなぜ、修験の山域は女人禁制であったのか、
ということに触れたいと思います。
いろいろと文献を調べてみると
大きく三つの要因があるようです。
ひとつめは、男性の修行の妨げになるため。
つまり性的欲求を掻き立てる存在がなくす禁欲主義に基づく考え方。
古来より山は信仰の対象であり、
畏怖の念をもって拝むことが通常で、山頂に登ることは禁忌でした。
しかし日本の山岳信仰と仏教の山岳修行が融合して修験道が普及すると、
山は神聖な場所であると同時に厳しい修行の舞台になります。
その修行の場から、
性的な欲望を掻き立てる存在としての
女性を排除する必要があったということ。
ふたつめは「穢れ」。
穢れとは不浄のことで、
経血、出産時の出血による穢れを唱える信仰は
多くの文化で見られます。
また穢れたものに触れると穢れは伝染するという観念も
一般的な習俗として伝わってきました。
古来より日本では穢れには死を意味する黒不浄、
出産を表す白不浄、経血を表す赤不浄の3種類が存在するといわれ、
なかでも女性は血の穢れである白不浄と赤不浄と切り離せないことから、
女性が不浄とされてきたと言います。
ただしわたしこの女性の血=穢れの感覚は多分弥生時代の渡来人による感性だと
推測しています。
なぜならば、縄文期においては
文明自体が母系社会、女権社会であったからです。
みっつめは仏教の教義と戒律。
仏教には守るべき「五戒」があり、
中でも「不邪淫戒」(姦淫をしてはならない)に対する思想は
とても強固な戒めとなっています。
出家僧となれば「不邪淫戒」は絶対的な戒めであり、
結果的に寺院や聖域への女性の立ち入りを禁忌となります。
もともと仏教には女人罪業観という女性劣位の思想があったため、
男女の双方に平等に課せられたはずの「不邪淫戒」が
女性を排除する方向を強めたと言われています。
以上のように、
修験道、山伏にとっては女性の存在は、ある意味「敵」のような存在であり、
神聖な修行場に足を踏み入れることはタブーとなってきたわけです。
しかし、いまやほとんどの修験の山にも女性は立ち入りができますし、
もはや修行として山へ篭る行者のなかにさえ女性はいます。
かといって、山の聖域と神気は汚されていると思えません。
ではなぜ、古来より山伏たちはそれほどまで女性を聖域へ
立ち入らせたくなかったのでしょうか?
つづく
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